①
思春期〜妊娠前:からだのケアについて
今回は、10代20代30代のかたへのおはなしです。
最近、この年代のみなさんからの相談が多くなってきました。
1年後、5年後、10年後・・さらに閉経期や老年期、
未来の自分を想像してみませんか?
こころもからだも元気でいたいものです。
そのためにいまの時期だからこそ提案します。
①
自分のからだを知りましょう
②
元気に過ごしていく方法を知りましょう
いままでは、病院は“病気になって行くところ”でした。
これからの医療は、“病気になるまえ(未病)に病院に行く“、
そんな時代にかわりつつあります。
病気になってからでは、多くの医療費がかかります。
さらに、通院や入院で、からだだけでなくこころも疲弊していまいます。
いざ、妊活しようとしてもなかなか妊娠できない・・・
妊娠後に病気(糖尿病、高血圧、甲状腺疾患など)がみつかった・・・
この病気が流早産のリスクになるなんて・・・
そして、あかちゃんにも影響するなんて知らなかった・・
風疹麻疹の対策を妊娠前にすればよかったな(パパも)・・・
ダイエットでの痩せが、あかちゃんの将来の病気
(心疾患、高血圧、メタボリック症候群、脂質異常症など)に関係するの?
食事や体型が大切って誰も教えてくれなかった・・・
かつて、わたしは周産期センターで仕事をしていました。
病気をもった妊婦さんや胎児が集まるところです。
紹介・救急搬送された妊婦さんたちから、
実際、このような言葉を聞き、たくさんの涙をみてきました。
私はあかちゃんを産む気はないから大丈夫!
わかいから元気だし、生理痛や不順は病気じゃないです!
いえいえ、産みたいひとだけでなく
すべての10代・20代・30代のみなさんにかかわるお話です。
月経痛、月経不順、食・運動習慣が、
中高年になったときの病気に大いに関係するのです。
月経不順のタイプでは子宮体がんのリスク因子になります。
骨粗鬆症で骨折になれば介護を必要とします。
“点:現在の病気”だけを診るのではなく。
“線:これからの健康”を説明し、寄り添うことを心がけています。
医師は、みなさんの状態から、この先の姿がおおよそ想像できます。
占い師みたいですが、異なるのは、自分自身の予想や考えでなく
エビデンスやガイドラインにそって想像しているということです。
病気になってから・・・ではなく
病気にならない作戦を考えてみましょう。
むつかしい質問や相談でなくても、
子宮ってどんなかたちなのかな? 卵巣ってなにをしているの?
この生理の量は普通? 生理痛はがまんしないといけないの?
彼氏ができたけどお付き合いはどうしたらいい?
・・・なんでも知る・聞いてみるという気持ちが大切です。
ご自身のからだに興味をもってください。
府中市民病院婦人科は、“線”の医療を目指しています。
ブログに登場しているやさしい看護師さんもいます。
ご自身のからだの心配ごとがあれば相談してくださいね。
【相談出来ること】
①
生活習慣について
妊娠前からの習慣が妊娠・出産・あかちゃんの健康に影響します。
あなたが中高年になったときの健康にももちろん影響します。
◎肥満ややせ
・将来の骨粗鬆症のリスクに関連します。
・あなたの栄養環境は胎児がおとなになった時に影響します。
妊娠前から栄養状態を良くしておく必要があります。
やせた妊婦さんのあかちゃんの出生体重が小さいことが
問題となっています(注1)。
◎たばこ
◎アルコール
◎催奇形性のある感染症(風疹など)や薬剤の使用
◎妊娠前の問題になる病気(甲状腺異常、糖尿病、高血圧など)
・妊娠時に血糖値が高いと胎児に影響します。
・血圧が高いと母体の脳卒中だけでなく、常位胎盤早期剥離(注2)で
胎児や母体が亡くなってしまうことがあります。
・甲状腺の病気は流産や早産のリスクになります。
◎葉酸不足
②
婦人科疾患について
◎月経困難症(月経痛)
学校や仕事に行けなくなるなど日常生活に支障をきたすことをいます。
原因となる病気のないものと、
病気のあるもの(子宮内膜症(注3)など)があります。
子宮内膜症の場合はますます症状が悪化するばかりでなく、
将来の不妊の原因となってしまいます。
◎月経前症候群(PMDs:PMS/PMDDの総称)
月経前の倦怠感、頭痛、浮腫み、イライラや抑うつなど
このような婦人科疾患は、仕事へのパフォーマンスの低下、早退、病休
などによる、莫大な労働損失をひきおこします。
【注釈】
(注1)出生体重低下により将来発症リスクが明確な疾患
1)
虚血性心疾患
2)
Ⅱ型糖尿病
3)
本態性高血圧
4)
メタボリック症候群
5)
脳梗塞
6)
脂質異常症
7)
神経発達異常
8)
骨粗鬆症
9)
がん、慢性呼吸疾患
(注2)
常位胎盤早期剥離とは:胎盤は胎児が産まれるまでしっかりと子宮壁に付着しており、母体から胎児へ酸素と栄養を届けます。常位胎盤早期剥離は、胎児がまだ子宮内にいるうちに子宮壁から剥がれて出血がおこり、胎児への酸素が減少し胎児死亡を引き起こします。母体死亡の原因にもなります。血圧の高いひとや喫煙者でリスクがあがります。
(注3)子宮内膜症とは:本来、子宮の内側に存在する子宮内膜組織が、子宮以外の場所(卵巣、腹膜など)で増殖、剥離を繰り返す病気です。子宮のなかの子宮内膜組織は、月経血として腟から体の外に流れ出ていきますが、子宮以外の場所にある子宮内膜組織は腹腔内にとどまり、炎症や痛み、癒着の原因になります。閉経まで進行していきます。
また、不妊の原因の多くを占めます。
婦人科 牧野